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柔らかな微笑を浮かべ、資料を手繰り寄せるサロウ。
季節も季節ではあるが、薄い生地の寝間着が妖艶な体躯を強調していた。
自分の部屋だというのに、ラストはどこか気まずそうに視線を逸らす。
少女の身体に、気恥ずかしさを覚えたから――だけではない。
ラストは未だに、サロウへの情報料を払っていなかったのだ。現在、彼がここまで動けているのは、彼女のお陰に他ならない。
――……この依頼を終えてから、色々と教えてやるつもりだったんだがな。
――まぁ、不完全な情報でもコイツが良いんだったら、特に言う事はない……か。
受けた借りは、色を付けて返すのがラストの流儀である。それも、自分より弱い人間から受けた借りならば、尚更だ。
その為、もう少しスタージャの内部を探ってから、サロウに情報を流そうとしていたのだが――どうやら、彼女の方が我慢できなくなったらしい。
そのサロウは『玩具屋』の資料を見ながら、まるで子どもが新しい玩具を買ってもらった時のように、目を輝かせている。
これでは、自分とサロウのどちらが年上か分かったものではない。
――というか、この女……よく男子寮に入ってこれるな。危機感無さすぎだろ。
――……ま、どうでもいいか。
「その資料、口外するなよ。後、何か聞きたい事あったら、教えてやる。ここまでしたんだ、釣りが返ってくる情報だからな」
サロウが淹れたコーヒーを口に含み、一息ついたラストは気だるげに口にする。
彼からすれば、まだやるべき事が終わっていない為、さっさとサロウに帰ってもらいたいが為の言葉だったが――――
あろう事か、サロウがきょとんと目を見開き、徐々に頬を染め始めたではないか。一体何を勘違いしたのかも分からず、ラストも微妙な表情で少女の反応を待つ。
「お釣りは……身体でって? ふふ、安く見積もられちゃったわね」
「……」
「でも、安い女と思われるのも癪なのよ? 私だって、初めて」
「それ以上来るな、別にお前の遍歴に興味は無いが……ボタンを外しながら迫られても……その、困る」
「あ、あら……可愛いとこ、あるじゃない」
顔を真っ赤にしながらサロウを突っぱねたラストは、今一度――資料に向き直った。
自分の精神と、鼓動の高鳴りを落ち着かせる為に。
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