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「――ガッ、ハ!」
何が起きたのか理解できない。思考が定まらず、耳もほとんど聞こえない――いや、それよりも身体的なダメージが深刻だった。
目は生きているが、周囲に広がっているのは木っ端微塵となった自分の店の残骸だけだ。
自分の身体を見渡してみても、重度の火傷を負っている。息をするだけで、全身に耐え切れない苦痛が襲い掛かる。
――何が……。
自身に治癒魔法をかけながら、ようやく頭の霧が晴れてきたのを自覚する『玩具屋』。
そうだ、自分は確かにあの瞬間――ラストの首を吹き飛ばした筈だ。
――そう、か……あの首が壁に突き当たった瞬間、それが起爆のスイッチになったのか……。
まさか、身体を爆弾にするとは――
確かにそんな能力が生まれついて備わっていたのなら、あれだけ偉そうにしているのも頷ける。間違いなく、自分が同じ年齢の時に戦えば無残に敗北しただろう。
それだけ爆発の威力が凄まじかったのだ。最早、学生が織り成す威力ではない。
店は消し飛び、中にあった毒も全て消滅してしまったが――それに釣り合うほどの才能を潰せたのだと確信する『玩具屋』。
――だが……。
――監視の人間が現れなかったのが気になる……あれだけの才能が潰されるのを放置したとでもいうのか……?
――いや、そんな事はどうでもいい……これで、Sランカーとして認められるのもまた近くなった……そう、なれば、僕はランドを潰せる……。
終わった戦いなどどうでもいいというように、疑念を心の隅に追いやる。だが、男がようやく息を整え、周囲の粉塵が完全に消え去った時、まだ何も終わっていなかったのだと理解する事となる。
「楽しそうだったな」
唐突にかけられた声が、冷静になりかけた『玩具屋』の脳内を激しく揺らす。
ありえる筈がない――心の中でそうは思っていても、自分の思考とは裏腹に視線は声のした方向へと向かっていく。
「……お前!」
「まぁ、何というか……お前、馬鹿だろ。どこの馬鹿がお前に毒を治しにもらいに行くんだ?」
『玩具屋』の目前にいるのは、先程殺した筈の――ラスト・アバズール。
だが、今の彼には傷一つはおろか、埃一つとして付いていない。
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