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「そ、ふざけ……ハァ? そんなもの、関係ない筈だ!!」
「じゃあお前は……いきなり毒盛られて、顔面吹き飛ばされても関係ないって言える聖人君子なのか? それなら、もう止めようじゃないか」
「い、や……それ、は……」
狼狽を隠しきれずに動揺をみせる『玩具屋』。
どうにかしなければならない。たとえ、この戦いをこのまま終わらせた所で、上位ランカーに匹敵する怪物に目を付けられれば、命がなくなってしまうのだから。
ここまで『玩具屋』がすんなりとラストの言葉を信じたのは、理由がある。
あの時の閃光。アレは間違いなく、学生程度の魔力で解き放つことの出来る代物ではなかった。
だが、アレを行使したのが――『虚飾』だとすれば。彼の織り成す嘘の結果だとすれば。
そのどれもに、筋が通ってしまう。
「そ、そうだ! それならお前も、殺されるべきなんじゃないか? お前は『虚飾』を自分の姿に化けさせて入れたんだろう?! なら、その矛先はお前にも向く筈だ!」
「お、よく分かったな。苦し紛れの返しとしては、よく言えたもんだ……だが、俺はもう一つ、依頼を出してる。『虚飾』ソラが俺を殺しに来た時の為にな……」
「そんな奴、いるものか……」
強者が息を荒げながらも、必死に活路を見出だそうとする様。見る者によっては滑稽に映るだろうが、ラストはそれを茶化さずに淡々と言葉を紡いだ。
「『喜笑』…………知ってるだろ?」
「…………あ」
「悪かったな、俺は鉄壁の壁に守られてるんだ。最初から終わってるこの勝負……だったんだが、お前があんまりにも頑張ってるもんだからネタ明かし。さぁ、もう止めようぜ」
その言葉だけで『玩具屋』は全てを察し、絶望する。自分に生きる道がもう無かった事に。
たとえ、この才能を潰したところで――これから先の未来はないと。
もう『玩具屋』から零れるのは、渇いた笑みだけだった。そして、ラストも微笑する。勝ち誇ったような――強者が見せる笑みで。
☆☆☆
同刻
この戦いの監視者である『虚飾』ヌルは、自身の聴覚を最大限にまで活かして彼等の会話の全てを聞いていた。
だが、顔に浮かぶのは怒りではない。ましてや、悪意でもない。
あるのは、ラストへの純粋な賞賛と好意。
「アイツ……とんでもない嘘吐きだなぁ」
☆☆☆
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