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「何故、私が貴方の心配をしなくちゃならないの?」
「嫌だなぁ、サーミャちゃんが俺を部屋まで送ってくれたんだろ? 目覚めた時、君がいたのにはビックリしたよ」
「……あまり大きな声で言わないでくれないかしら。周りに勘違いされて困るのは私なの」
どこまでも軽薄に言葉を並べ立てるラストから、顔を背けるサーミャ。
背中越しでも分かる彼女の苛立ちを前にすれば、大抵の男は萎縮する。
ラストがそれすらも構い無しに言葉を放ち続けるのを見て、周囲の生徒達は心中で同じような思いを馳せていた。
ラストが満身創痍に再度なった事から、皆が導きだした結論――恐らく、ラストはサーミャにしつこく迫った故に、撃退された――だった。
それでいて、尚もああして語り続けている。半ば同情、半ば嘲笑の感情の視線がラストに浴びせかけられているのを、彼は気付いているのだろうか。
無論、ラストは気付いている。そして、少年はその空気すら利用し、サーミャに微笑みかけた。
――……サーミャが俺を送り届けたのなら、サーミャは十中八九スタージャの人間だ。
――普通だったらソラがスタージャに俺を送る筈だろう……その先、どうなったのかは分からないが……。
――仮にスタージャからランドに身柄を送られるなら、教師にでも受け渡すのが普通だ……だが、教師からは今まで一度も質問なんて受けてない。
――つまり、ランドには何の連絡もなかったって話だ。
――何らかの手違いがあったところで、わざわざサーミャに俺を送らせる訳がない……さて、何がある?
ラストは思考する。
サーミャがスタージャの人間である事に、不都合はない。そして、身分を隠すのも当然の話だ。
もしもスタージャから送られたランドの護衛なら、身分を隠さない方が異常であろう。だが、不自然なのは――――
――わざわざ俺を送り届けるなんて真似をする必要が……あるのか?
――まるで、サーミャがスタージャの人間です、と俺に宣言してるようなものじゃないか。
――ソラがやった……か? だけど、俺はそれを知ったところで何をどうこうする訳じゃないぞ?
不明瞭な情報だけが、何故か入り込んできている現状、ラストは混乱することしか出来ない。
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