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それでも、物は試しか。
適当にカマを掛けてみて、その反応から情報を探っていけばいい。こうでもしなければ、ラストはサロウに返せる情報が少なすぎる。
「ところでさ、サーミャちゃん……俺がどうしてこうなったのか、知りたくないの?」
「興味ないわ」
「いやぁ、実はスタージャに挑戦してみたんだよ……どう?」
「……スタージャ?」
怪訝な顔付きで自分を見つめるサーミャに、ラストは確信する。彼女はどうやら、自分に身分を隠しておきたいらしい。
このまま適当に話を切り上げても良いが、周囲の視線がある。このままもう少し踏み込んでも、奇怪には映りはしない筈だ。
「そうそう、これで俺もスタージャのランカーさ。ま、Aクラスだから……サーミャちゃんには劣るかな」
「……何を言ってるの? 確かに私はスタージャに所属しているけれど、Cクラスよ」
――おっと、これは予想外。
――間合いを詰め込まれたのは、こっちだったらしい……ありがたいね。
ここでサーミャが口を滑らせれば儲けもの、程度の認識でいたが、暴露されるとは思っていなかったラスト。
だが、好都合だった。彼女がスタージャで自分よりも経験があるのなら、足りない知識の欠片を埋められるに違いない。
そう思いながら、ラストも警戒ばかりせず聞きたいことを聞こうとしたのだが、
「あらあら、男前があがったじゃない、ラスト」
十代後半とは思えぬ艶かしい声が、新たに廊下を塗り潰した。
「どうだったの? 私のお仕事の出来」
「見て分からねぇか? 有難い先輩のご指導は、裏付け程度に役に立ったよ」
「良かったわ……、その程度で済んだのが私のお陰なようで……それで、隣の貴女は、サーミャちゃんだったかしら?」
サーミャに接するものとは全く違う口調で、声の主――サロウに吐き捨てるラスト。
そんな少年に目を丸くしつつ、同年代とは思えぬ起伏に富んだ身体つきのサロウに、サーミャは僅かな敗北感を覚えていた。
女としての魅力が負けているとは思えないが、レンもこういった女性の方が好きなのだろうか。
――私が迫っても……軽くかわされちゃうし……。
――でも、この人……年上だから……私も一年か二年すれば……。
――……そういえば一年前から私、サイズ変わったかな……?
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