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決して肉感的とは言いがたい自分の身体を見つめ、肩を落とすサーミャ。
人の成長期が訪れる時期は各々であるとよく言われるが、今の段階からあそこまで成長する可能性は高くはないだろう。
「……で、何しに来たんだよ」
「ふふ……何しに来たと思う?」
いきなり顔に暗い影を落としたサーミャに、ラストは戸惑いながらもサロウへと犬歯を剥ける。
だが、そんな威圧はどこ吹く風とばかりに、金色の眼は愉悦を浮かべるばかりだ。
「大方、俺を笑いに来たとかだろ?」
「残念……敵情視察みたいなもの、かしら?」
「ハァ?」
訳が分からないと眉をひそめるラストを尻目に、爬虫類のような瞳が向けられたのは――サーミャ。
彼女は未だに自分の身体への不満と改善点を思い描いているようで、二人の様子など気にも止めていない。
「……でも、心配はいらないみたいね」
「おい、お前が勝てる相手じゃない、止めとけよ。……多分だけど、な」
「……あらぁ?」
どこか安堵したように頷くサロウに、ラストは警告の言葉を投げ掛ける。
サーミャから感じる強者としての威圧は、とてもではないがサロウが敵うものとは思えない。
何故、サロウがサーミャに敵対心を抱いているのかは分からないが、恩もある以上、サロウを無闇に傷つけさせる訳にはいかないのだ。
だが、そんな気遣いをどう取ったのか。
サロウはそれまでのどこか沈痛さを交えた微笑から一転、表情を緩め、悪戯っぽく普段のように笑った。
「もしかして、私の心配をしてくれてるのね?」
「……何を言うかと思えば……」
「恥ずかしいのは分かるわ? 自分の気持ちに素直になるっていうのは、隠し事が出来ないのと同義よ……? 大丈夫……貴方の本心、私は笑いはしないわ」
「こ、の、蛇女……! たまに気遣ってやれば調子に乗りやがって――!!」
白魚――ではなく、ひんやりとした蛇の腹に似た細い指が胸を指す中、ラストは顔を赤らめて怒りを露にする。
丁度その時だった。三人の元に、明確な嘲笑の言葉が突き刺さったのは。
「おい、良い様だなぁ? ラスト君よぉ?」
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