12人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
神鳴様が来ると、お互い、想うことは、〝いつか〟じゃないから。
それで、もういいんだよ。
彼の右手がふわっと上がって、私も合わせて右手を上げて、〝さよなら〟の合図。
「さようなら」
またね、は言えない
これも、〝いつか〟だから。
〝いってらっしゃい〟も言えなくて、
〝おかえりなさい〟は〝いつか〟だから。
彼は東へ私は西への反対方向へ、振り返ることなく自分の道を進む。
〝いつか〟いい思い出と呼べる日がくるのだろうか。
〝いつか〟神鳴様の音楽の話しを彼以外にする日がくるのだろうか。
〝いつか〟彼のピアノの奏でに触れる日がくるのだろうか。
〝いつか〟彼の〝覚悟〟が実りますように。
願うよ〝いつか〟と。
神鳴様の奏でる音楽と共に現れた彼との名前のつかないまま、終わった想い。
それは、夏のほんの数日の出来事。
最初のコメントを投稿しよう!