第一章 「トレジャーハンター」

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 ラウルは周囲に視線を向ける。先ほどよりも野次馬が集まってきている事に、男も気づいたようだ。  「――フンッ」  男はラウルから銀貨をひったくると、どこかへ歩いていった。  野次馬も散開していく中、未だに嗚咽を漏らす女の子を見兼ねたラウルは、しゃがんで目線を合わせる。  「ほら、これやるからもう泣くな」  そう言って差し出したのは、ラウルが先ほど買ったクレープだった。女の子が持っているクレープは、ほとんどクリームが地面に落ち、食べられそうになかった。  「……うん!」  女の子は涙を拭き、元気よく返事をした。  「ありがとう、お兄ちゃん!」    「もう人にぶつかったりすんなよ」  ラウルから受け取ったクレープを手に、嬉しそうに走っていく女の子を見送った。  「あ、あの!」  そんなラウルに、先ほどの少年が声をかけた。  「さっきは……ありがとう。おかげで助かったよ」  「あーいう奴に正論ぶつけんのは、逆効果だ。適当に合わせとくのが一番いいんだよ。――まぁ、女の子を助けようとしたのはお前だけだったし、その勇気は誇りに思っていいんじゃないかな」  それだけ伝えると、ラウルは背を向けて歩き出す。  「あ、ま、待って!」  少年は再びラウルを呼び止める。少年の意図が分からないラウルは首をかしげる。  「お礼がしたいんだ! さっきから君が損してばかりだから……」  「俺は別に……気にしてないぞ?」  「い、いいから! ボクの気が済まないッ!」  「え、ちょっ!?」  少年はラウルの腕を強引に掴むと、どこかへ歩き出した。 ◇◇◇  ラウルは、少年に連れられてとある食事処へ入った。  二人は空いている席につく。  「ボクの奢りだから、遠慮しなくていいよ」  「ほんとか!? 実は俺、さっきからずーっとお腹鳴りっぱなしだったんだよ」  注文を終えると、最初にラウルが口を開いた。  「そーいや、自己紹介がまだだったな。俺はラウル。ラウル・ドレークだ、よろしく」  「うん、よろしく。ボクはアン――」  「アン?」  「アランだよ。ただのアランだ」  「おう、よろしくなアラン」  そして二人は握手を交わす。  アランと名乗った少年は鮮やかな金髪に透き通った綺麗な碧眼。女性と見紛う綺麗な顔立ちをしていた。  
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