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 急に話を振られて何事かと思ったが、これだけのことでなんのことかわかった覚馬の悩みは大きかったのだろう。そして何も言わずとも、もうキヨエにはわかっている。 「もしかして、それがわかっていたから僕を……?」  キヨエは困ったように笑うと、アルコールの入っている自分のグラスを傾けた。 「ええ、そうなの。だって本当のこと言ったらきてくれないと思ったから」  覚馬は何も言えなかった。何か言えるだけの言葉も考えも思い浮かばない。  キヨエはそんなことまでお見通しなのか、それ以上は何も言わず、通常の接客に徹しているようだった。 「またきてね~」 「二度とくるかよ」  どうやら陽一とセイラは気が合ったらしい。帰るときにはすっかり冗談が言える間柄になっていた。 「ごちそうさまでした」 「またHEROに会いにいくわね」  お礼を言って店を出る。見送るキヨエの顔が頼もしく見えたのは、覚馬がすでに相談したいと思っていたからなのかもしれない。
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