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 大学の講義を終え、雨が降りそうだなと曇り空の下を足早に歩く。  折り畳み傘は持っているものの、しまうのが面倒なのであまり使いたくはない。店まで雨が降らないことを願いつつ、甘実覚馬はアルバイト先を目指していた。  向かっている先はカフェレストラン〈HERO〉。覚馬が一年ほど世話になっている店だ。  最寄駅につくと電車に飛び乗る。店がある最寄り駅までの五駅を電車に揺られ、降り立つと人の波に紛れながら構内を歩いた。 「あ、降ってきちゃった」  外に出た途端頬に雨が。ぽつりぽつりと地面を濡らし、次第に強さを増していくのが気配でわかった覚馬は迷わず走り出した。  店まではほんの数分だ。本降りになる前には店につけるはず。そう思っていたのだが、覚馬が走るよりも雨の勢いの方が早く結局濡れてしまった。 「おはよ、覚馬。あれ、雨降ってきたのか。あ、ちょっと待ってろ、今タオル持ってくっから」 「ありがとう陽一」
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