二兎を追う者……。

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そこには黒い顔、長い耳、裂けた口、ぎょろりとした目、飛び出た舌を持った者が、三本しかない指で私の肩を掴んでいた。 「ひぃっ!あ、悪魔!」 そう叫びにならない叫びをあげて私は、へたりこむ。 「ひひっ。悪魔だなんて失礼な。あんたの願いを叶えに来たんだぜ……」 「い、いや……」 願いを叶えると言われても私は、会話をする気にもなれない。 「双子の兄の体と弟の顔を持つ男が欲しいんだろ?俺には容易いことだ」 私は、お尻を下げて少しずつ悪魔から離れていく。 「いいです!あなたには、何も!」 悪魔は、ひひっとまた笑う。 「あんたの命を取ったりしないよ。安心しな。明日を楽しみに待ってな……」
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