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「じゃあ、本番始まる前にうちに寄ってくれる?」
「はい。大丈夫です」
私も一旦家に帰って浴衣に着替えるつもりだった。
香音ちゃんの着付けをしてから着替えるか、着替えてから着付けるか。
どうしよう。
そんなことを悩んでいた。
「七瀬ちゃんって四号棟だよね? 評議委員の東条くんって知ってる?」
突然、お兄ちゃんの名前が出て、お茶を噴き出しそうになった。
「あ、はい。お隣さんです」
『お隣さん』なのは確かだけど、それだけじゃない。
兄妹のように育った幼なじみだし、今ではこ、恋人、だったりする。……一応。
「そうなんだ。彼、凄いよね。今日のバンド、東条くんが呼んだんでしょ?」
「はい。ドラムの人が学生時代の友だちだとかで」
お兄ちゃんは仕事が忙しくて、今日のお祭りにも来られるかどうかわからない。
その代わり、事前準備にはかなり尽力していた。
その最たるものがバンドの招致。
私は聞いたこともなかったけど、知る人ぞ知るバンドらしい。
「保育所のママ友たちもビックリしてたよ。客寄せ効果はかなり大きいな」
「いっぱい集まるといいですね」
「うん。さあ、もうひと踏ん張りするか!」
大きな声を出して牛島さんが立ち上がると、自然とみんなも立ち上がって作業に戻った。
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