先生の腕

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当の先生は飄々(ひょうひょう)としたものだ。 キラキラと目を輝かせていたお客様が帰れば、 太陽が沈んだかの様な静寂が一瞬訪れ、 そして、その一瞬間の後にはすでに 次の太陽が現れんばかりに気力を取り戻す。 そして、次のお客様の為の準備を始める。 髪を整え、香りを確かめている。 前のお客様の痕跡をキレイに流し、 フラットな状態へ戻すのだ。 特に香りが重要らしく、部屋の換気をして、 前のお客様の香水の微妙な残り香までキレイに 取り除くのだ。 プロ意識というものなんだろうか? それとも、先生自身の習性といったほうが良いのだろうか・・・。 この裏側を見られるのは、自分の特権でもあり、 嫌な部分でもある。
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