先生の腕

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先生は何でももらう。 特に、午後の時間。1時間のお客さんの時はともかく 長い時間の時は何をしているのやら・・・。 でも、部屋から出てくる時のお客様の笑顔は格別。 まるで、青春時代真っ盛りの様なキラキラした笑顔なのだ。 先生の魔法に掛かったな・・・と、 私は嫉妬混じりの目で、お客様を見てしまうことも 何度かあるけれど、お客様の方は、私のことは目に入らないらしい。 お金の受け渡しと次回の予約をしていくと、 先生の顔を見つめて、キラキラした目をすこし潤ませて 別れのあいさつをしていく。 もう、それはそれは、夜の駅の改札で繰り広げられる カップル達の熱い抱擁のように、 空間と世界がねじ曲げられた雰囲気を醸し出しているのだ。 私はいつもこの空気を断ち切れるものなら 断ち切りたいと思っているけれど、 どうしても断ち切れないバリアの強さを感じる。
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