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要人警護の為に、警視庁から派遣された担当官が国賓の許へとやって来て言った。
「どうやらあなたの命を狙う者がいるとの情報が入りました。ですがご安心ください。我々があなたをお守り致します」
「それは心強い。どうぞよろしくお願いします」
外国からの客人は深々と頭を下げた。
「お任せください。しかし二十四時間、我々に同行されてはあなたの気も休まらない事でしょう。そこで、これを渡しておきます」
担当官はそう言うと、上着のポケットから何やら小型の装置を取り出して見せた。
「これはあなたの命を守る装置です。実は、先程完成したばかりで、名前がまだないのですが…、そうですね、バリア発生装置とでもしておきますか…。このバリア発生装置は、持った人間の周囲にバリアを張り、どんな攻撃からでも本人を守るのです」
「それは素晴らしい」
「これを常備しておけば、あなたが一人になったもしもの時も、命は守られます。もちろん我々も全力で警護に当たらせてもらいますが…、ま、二段構えというやつですな。ではさっそく使ってみましょう」
担当官は装置を渡し、客人は装置のスイッチを押してみた。すると、客人の周囲にシャボン玉のような透明な膜が現れ、客人を覆った。客人は感心した様子で言った。
「なるほど、これがバリアですか。因みに効果はどれほど持つのですか?」
「持続効果は一ヶ月と聞いています」
そこへ、担当官に電話があり、担当官は誰かと会話をした後、客人に説明した。
「今、装置の開発者から連絡が入りまして、どうやら一度スイッチを押すと、一ヶ月経たない限りはバリアを消すのは不可能だそうです。まあ、命が守られる事を考えれば、それぐらいは大目に見てください」
担当官の申し訳なさそうな苦笑いとは逆に、深刻な顔の客人が聞いた。
「攻撃から守ってくれるのは結構な事だが…、それより、喉が渇いたので先程から水を飲もうとしているのだが、バリアが邪魔で飲めないんだ。どうすればいいと思う?」
客人のその問いに、事の重大さに気づいた担当官は思わず呟く。
「…嘘でしょ」
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