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斉藤さんは、ちょっと照れたように続けた。
「──君も、絶対に幸せになってくれって。勝手な言い分で申し訳ないけど、約束してほしい、心から祈ってるからって、何度も」
もう、あの人は──。
なぜか、涙がこぼれそうになった。あたふたする斉藤さんに向かって、大丈夫です、すみません、と繰り返す。
「兄貴、きれいな顔してるし、そんな優しいこと言われたら、思わずよろめきそうになって、どうしようかと思ったっす」
冗談ともつかない口調で言われて、涙が引っ込んだ。あわわ、と思う。斉藤さんとライバルになんてなりたくない。
「実は、もう一つあるんすけど」斉藤さんが、言いにくそうに続けた。
「これは、兄貴に直接聞いてもらった方が──」
「ここまで聞いたら、同じです。教えてください」
きっぱり言うと、斉藤さんが、「兄貴に怒られたら、一緒に謝ってくださいよ」と真顔で言った。
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