開幕

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「──帰ったら、コーヒーを淹れますね」  聡さんが、うん、とにっこりした。 「やっと落ち着いて二人きりになれる。なんか、ものすごく久しぶりだよね。──明日の朝まで、いろいろ楽しみ」 「何がですか?」  思わず聞いてしまった。 「言っていいの? ここで?」  いたずらっぽく笑う彼に、あわてて「だめです」と答える。  聡さんが、ふと真顔になった。 「──ねえ、ここんとこ、なんか変じゃなかった? 俺の気のせい?」 「変?」 「うん。この十日間くらい、なんかすごくいろいろあった気がする。俺、結構ひどい目に遭ってたような──」  言いかけたところに、川久保さんの声が飛び込んできた。 「おさないくーん、おさないそうくーん、どこですかー? いたら、お返事をしてくださーい」  聡さんが、あわててフロアに背を向け、壁の方を向いた。でも、ちょっとだけ遅かったらしい。 「みーつけた!」川久保さんが、聡さんの肩に腕を回した。「はい、確保ー!」 「なに、今度は」  聡さんが、後ずさりしながら尋ねる。いろいろと懲りているらしい。
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