天の川の甘い雫

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「今日は七夕だよな」 朝から雲一つない天気で、蒸し暑いくらいだった。夕方になり少し涼しい風を期待したが、裏切られている。 「そうだね、今年は彦星と織姫は会えそうだ」 昨年はあいにくの雨により、どんよりと曇った夜空を見上げ、伝説の二人を可哀想に思った事を思い出す。 そして、今年は拓未(たくみ)にとっても初めて迎える由伸(よしのぶ)と二人で過ごす七夕の日。 公園近くにある竹林から、小さい枝を拝借してきたところだ。 「これ、見つかったら怒られるね」 拓未は悪戯に笑顔を由伸に向けた。女の子と見間違う顔に、由伸はとろんと目尻を下げる。 「そうなったら、お前がにっこり誤れば済むよ。その顔には、誰も怒れないから……」 クスクスと笑いを堪えて、真面目な顔でわざと可愛いを口にする。拓未はそう言われるのが一番イラッとくるからだ。 「笑うなっ。全く、いつになったらやめてくれるんだよ」 不機嫌な顔で睨みつける。睨まれた方はそれがまた可愛いと思ってしまう。完全にデレてしまっていて、顔が緩みっぱなしだ。 「あのさ、その顔止めた方がいいよ。知らない人が見たら単なる変態にしか見えないから」 「なっ、仕方ないだろ? 隣にお前がいるから平気だよ」 急に顔を赤らめて、由伸は顔を擦る。端正なイケメンは、どちらかというと強面で、初対面の者は先ず威圧されるだろう。 話してみれば、人当たりのいい優しい男なのだが。 「で、今日はどうする? 家でゆっくり七夕でもするか」 大学生の拓未は一瞬言葉を詰まらせるが、頬を朱に染めて、揺れる公園のブランコを見ながら答える。 「特にバイトもないけど、行ってもいいの?」 「明日は仕事だけど、別に構わないよ。それに、久しぶりに拓未とゆっくりしたいし」 嬉しそうに微笑んで、由伸は拓未の肩を抱く。
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