天の川の甘い雫

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「あ、ちょっ……。くすぐったいって。……教えてくだ、さい」 身をよじり、見下ろされる眼が潤んでいてキラキラしている。色気が勝っている面持ちに溜まらず、軽く口づけた。 「……っ、こらっ」 びくっと体を震わせる。 逃れようと暴れだす華奢な体を、少し力を込めて抱き締めた。火照った体を優しく包み込むように頭を撫でてから、もう一度唇を啄む。 力が抜けたように大人しくなった拓未は、哀しそうな顔で由伸を瞳に映し出す。 「お、教えて……ん」 この顔、反則だな……。 ふっと微笑んで、優しく見つめる。 「後で……。こっちが先」 その言葉を交えて、口を割るように舌が絡み入ってくる。温かくて、少し酒臭い。うねる様に貪る舌が息を荒くした。 「可愛いな、やっぱり。……好きだよ、拓未」 「馬鹿。でも……今は許す」 蕩けそうな瞳で見つめ返す拓未は、幼い頃に絵本で見た織姫よりも妖艶で、二十歳そこそこなのに美しい。 由伸は絶対に手放さないと誓った。彦星のようなドジは絶対にしないと……。 「愛してる……」 「うん、俺も。愛、してる…たぶん」 「たぶん、とか。好きな癖に……」 「いちいち、聞くなっ」 天の川に魅せられた二人は、夜空の星々に照らされながら深い愛に満ちた沼に落ちたように戯れる。 風がそっと吹き、笹が窓からベランダへ飛ばされた。 天に届くように、二人の邪魔をしないように、そっと願いを込めて星明りに揺らめく。 二人の願いは永遠に。固く契りを交わされた夜は、遅くまで熱を帯びていた。 来年も、その次の年も、ずっと俺の織姫でいてくれ――由伸    〈 完 〉
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