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毎年ここへ来ると思い出すことがある。 ツンと冷えて湿っぽくなった鼻先。目の前に聳え立つ朱色の鳥居に首を反らし、隣で口を僅かに開いて驚く姿。大人も子供も関係なく、初めてこの鳥居を見る者は大体同じ反応をする。 屋台の照明も、丸くて大きな月も、夜気に冴えていた。 白くて、まだお手玉程の手を引き、人の群れの中を縫うように、ゆっくりと進んでいく。歩けるようになったばかりの息子は、ヨタヨタとしている割に力強く地べたを蹴って、必死について来ようとする。 それでもずっと先まで続く白い石畳の終着点まで歩くことは、まだ難しいのかもしれない。 なんて思っていると、やや後ろの方から声がかかる。 「ちょっと待ってよ。なんで先に行っちゃうのよ」 振り返ると、人の流れに苦戦しながら、コトナがふてくされた顔をして駆け寄ってくる。
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