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確かに、一歳を過ぎたばかりの子供を夜中に連れまわすのは、仮にも良いことだとは言えなかったが、それでも年の変わる瞬間にこの場所で、一度家族揃って来たいと思った。 本当は子供が大きくなってからでもよかったのかもしれないが、大きくなりすぎて一緒に来ることを断られる前に、確実に来ようと決めていた。 「それに関しては謝るよ。我儘に付き合わせて申し訳ないと思ってる。ごめん。来年からは一人で来るよ」と利己的な行動を謝ると、コトナは渋々ながら許してくれた。 そこでもう一つ大切な用事を思い出した。 「そうだ、後でちょっと寄りたいところもあるんだ。なんだったら君は先に帰ってくれても構わない」 「ううん、私も行く。この子を会わせたいんでしょ?」とコトナは猫のような大きな瞳を悪戯に輝かせた。 うん、と頷き、なんだかんだ言って来てくれた嫁のコトナにも、無抵抗をいいことに連れてきた息子にも、心の中で「ありがとう」とお礼を言って、ぼくは昔のことを思い出す。
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