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「綺麗だ」
夜空を見上げる彼女の横顔を見ていたら
本音が思わず口から零れていた。
「え? なんか言った?」
「綺麗だって言ったんだよ、君が」
照れ臭そうにそう言った僕を、彼女は少しの間
不思議そうに見つめていたけど
「変なの」
それだけ言うと、微笑を浮かべ、再び、夜空を仰いだ。
今日は七夕。離れ離れになった織姫と彦星が年に一度逢える日。
そして1年前のこの日、交通事故に巻き込まれ
この世を去った彼女の命日でもある。
逢いたい、逢いたいと願い続けた1年だった。
「また逢えるかな?」
そう問いかけると彼女は首を横に振った。
「なぜ?」
「あなたには幸せになってもらいたいから。
私の親友を大事にしてあげてね」
彼女は全てお見通しだったことを知り
僕は申し訳なさでいっぱいになった。
「ごめんね」
この後、彼女は可憐な微笑を最後に僕の前から消えた。
僕は一生、彼女を忘れられそうにない。
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