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事件のショックが治まっていないのだろうか。
いや……、違う。うまく説明できないが、違う気がした。
「璃久。おまえ、何を塗り込めたんだ」
唐突な俺の質問に、璃久は怯えた目をこちらに向けてきた。
「何を封じ込めたんだよ。無理やり嫌なもん閉じ込めたって、結局いつかそいつは浮き出して来るんだぞ? あの時、お前が教えてくれたんだ」
少年は更に怯えた目になり、ジリジリと後ずさった後、いきなりクルリと背を向け、白いパーカーをヒラリと翻して家の中に消えてしまった。
小枝から飛び立つ小鳥を思わせた。
心と体に傷を負ってしまった少年に掛ける言葉では無かったかも知れない。
けれど俺は数か月前、俺に挑みかかってきたあの少年の気配が、もうどこにも無いことに多分ショックを受けていたのだ。
―――あの“岬璃久”は消えてしまったのだろうか。
それとも本当に、今、目の前にいた少年の中に塗り込められてしまったのか。イエロー・オーカーで。
だとしたら早く開放してやって欲しいと思った。
無理やり真実の心を閉じ込めても、きっとずっと苦しいままだ。
どうせ、遅かれ早かれ結局は、“閉じ込めたモノ” が暴れ出す日が、必ずやって来るのだから。
(END)
【読者様へ】
『RIKU』最終章をお読みになった皆様は、この短編のラストシーンで、「あ」と思われたのではないでしょうか。
未読の方にも、リクという少年の雰囲気が伝わったらいいな~^^
改めまして、『RIKU』本編も合わせて通読してくださった読者様、本当にありがとうございました!!
たぶん、そう遠くない未来、あの3人がまた皆様に会いに来ると思いますので、どうぞその時は、また温かく迎えてやってください!
貴重なお時間を、本当にありがとうございました!!
(lime)
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