第2章

4/4
前へ
/23ページ
次へ
 ただ空を眺めて揺られていると凄く心穏やかで、それでも考えないようにしようとしていた彼女のことを思い浮かべてしまい、どうしようもないなと苦笑いした。  そろそろ岸に戻ろうかと思った矢先、急に足首に何かが触れてそのまま水中へと引き込まれる。  何が起こったのか理解する間もなく、どんどん湖面が遠ざかって行く。  足元を見れば、足首に何やら植物の蔓のようなものが絡まり、それが俺の身体をどんどん湖底へと引き込んでいた。  手を伸ばして蔓を外そうとするも、蔓はなぜか足首を締めつけ外すこともままならない。  潜水するつもりで息を思いきり吸った訳でもないので、どんどん息が続かなくなってきて、酸欠で息苦しさを覚え目は霞み、湖面へ顔を出したいと思って水を掻くも少しも進まないどころか、更に足を引っ張られる。  死、と言う言葉が頭を過り、背筋がゾクリとする。  嫌だ、こんな所で誰にも知られないまま死ぬなんて!と、心の中で叫ぶ。  生きて帰らなければならないのに。誰か、助けてくれ!  そう心の中で何度も繰り返しながらも、ゴポリと最後の空気が口から溢れ、俺は意識を手放した。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加