天国でもお隣サン

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「あなたの生前の行いを反映した結果、あなたは天国行きです。」 使者より、その言葉を聞いた私は満足だった。 そうよ、この時のために、私は生前、善行を重ねてきたのだから。 当然といえば、当然の結果。 「ありがとうございます。」 私は今まで通り、微笑んで深々と頭を下げた。 お花畑の一本道の先には、眩い光に包まれた、桃源郷が広がっている。 生前は、ボランティアに進んで参加し、隣人、家族、地域の人々、全てに分け隔てなく親切に接してきた。私にだって、性格の合わない人くらいは居る。 はっきり言って、お隣の奥さんは苦手だった。 やたらはっきり物を言うし、間違ったことを言う人に対しては、徹底的に論破する。 かなり好戦的な性格だった。私は、彼女にはいつも、当たり障りの無い会話を志し、なるべく深く関わらないようにしてきた。 だから、今、私は驚いているのだ。 なぜ、あなたがここに居るの? お隣の奥さんが亡くなったのは、私より、1年前だった。 お隣さんなので、もちろん葬儀にも参列し、義理は果たした。 「あら、奥様もこちらにいらしたんですね。」 彼女も驚いていた。驚いたのはこっちの方よ。 何故、あなたなんかが天国行きなの? 私は、いまだに根に持っているのだ。 ボランティアに参加し、いろんな場に参加する私に対して、彼女は偽善と面と向かって言ったのだ。 いったい、天国と地獄の基準って何なの? ああ、折角天国に来たというのに、またこの人と関わらなければならないのかと思うと憂鬱になった。 「私も、知っている方が、こちらにいらして心強いわ。」 私は笑顔で、思ってもいないことを口にした。 すると、彼女は、フンと馬鹿にしたように笑ったのだ。 何で、こんな性悪女が天国なのよ。神様は不公平。私とこの女と同等ってどういうことなのよ。 「ねえ、奥様、どうして私が天国にいるの?って思ってるでしょ。」 私は、彼女から図星をつかれて、ぎょっとしたが、顔には出さなかった。 「そんな。思っているはずないじゃないですか。奥様は当然こちらに来る人だと思っておりましたわ。」 私が笑顔でそう言うと、彼女は真顔で答えた。 「もう、嘘をつくのはやめましょうよ。実は、私、生前、人の心を読めたの。」
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