天国でもお隣サン

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何を言っているの?この人は。そんなことがあるはずないじゃない。 「まあ、そう思うのも無理はないわね。私だって、こんな能力は欲しくなかった。おかげですっかり人間不信になったわ。人なんて、本音と建前は違ってて当たり前。ある時期、そう悟ったの。」 私は自分の思っていることを見透かされ、気味が悪くなって黙り込んでしまった。 すると彼女は溜息をついた。 「だから、私は、この能力を一生誰にも言わなかった。墓場まで持っていくつもりだったからそうした。だって、そうでしょう?自分の考えを読み取られてるなんてわかれば、私の周りからは誰も居なくなってしまうわ。」 彼女は悲しそうにうなだれた。こんな彼女を見るのは初めてだ。 そうか。彼女は、この能力があるからこそ、あんなにも人と対峙し、人の本音がわかるから、心から人と相容れない、まるで一匹狼のようだと、常々思っていた。 「私は、あなたが羨ましかった。人に好かれる術を知っていて、器用に人に取り入れる能力を持ったあなたがいつも羨ましかったのよ。」 けなされてるのか、褒められてるのかわからなかった。 「でも、私はできなかった。人の本音が、黙ってても聞こえてくるから。だんだんと、私はその雑音が耳障りになって、つい人に食ってかかる癖があったの。そんな私はきっと地獄行きだと思っていたわ。」 彼女の告白に、私は胸が詰まった。 この人は、ずっとこの能力に苦しんでいたのか。 私が、嫌っているのにうわべだけで付き合っているということも、すべてお見通しで、ずっと我慢をしていてくれたのか。申し訳ないとすら思った。 「いいのよ、人に好き嫌いがあるのは、仕方のないことだもの。でも、私はあなたが嫌いではないよ。ちょっと自分の善行に酔ってるナルシストだけどね。」 そう言うと、彼女は悪戯っぽく鼻に皺を寄せて笑った。 ああ、私は、彼女の何を見ていたのだろう。 誰が天国行きで地獄行きかなど、私の尺度で測れるものではないということを、今学んだのだ。 「こちらでは、仲良くできそうね。私も、今度からは、本音でいくから、覚悟しなさい。」 私は、腰に手を当てて彼女に向かうと、彼女は心底からの笑顔で笑った。
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