第2章

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「―――わ」 夏目の嘆声が上がる。 緑とも黄色ともつかない光が、尾を引きながら舞っている。目が慣れれば、あそこにもひとつ、ここにもひとつと明滅する光が目に入ってくる。 「……夏目」 流れるように飛ぶ蛍を目で追いながら秋月が言う。 「本当に……辞めてもいいんだぞ。俺に気兼ねは要らない」 「……俺、役に立ちませんか」 その声音に思わず振り返れば、すぐ後ろに夏目が立っていて。 「そんなことない。ただ、君に迷惑がか―――」 唇を人差し指で押さえられて言葉が途切れる。 「……お願いですから、もう」 迷惑とか言わないで、と夏目が顔を寄せた。 このひとの側にいたい。俺が、守ってあげたい。 だって、俺。 俺、は―――このひと、が。 不意に天啓のように舞い降りてきた認識。 このひとが―――好き、なんだ。 あきづきさん、と夏目の唇が動く。 黒い瞳に浮かぶ表情に秋月が途惑った。 「夏……」 唇から指が離されて。なのに声が出ないのはどうしてなんだろうと、夏目の瞳から視線を外せないままの秋月が思った。 脇にたらしたままの自分の指さえ動かせなくなって、琥珀の瞳が大きく見開いた。
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