コバト女学園

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「ニコちゃん、オイラも座席に着いたよー! 2階席だけど、割と近め。神席、おめでとう! コバトちゃんたちの表情を後で教えてね」  LINEの個別トーク。発信源は同じ会場内にいる田木(たぎ)さんからだ。田木さんの席は2階の上手側と聞いていたけれど、2階を見上げてみても、田木さんらしき人を探せなかった。皆同じコバト女学園のTシャツを着ているのだ。見つからなくて当然だろう。 「ありがとうございます! しっかり萌伊(もい)ちゃんの表情を、焼き付けて来ますね! 楽しみましょう!」  返事を返すと「了解」の意味のスタンプが送られくる。白い鳩が翼で親指を立てているようなポーズを取っている。チョイスがかわいい。田木さんは、とても40代のオジサマとは思えないお茶目さんだ。  携帯電話の電源を切ると、両隣の人と軽く挨拶を交わして、今日の私の席に着いた。 「いや~、緊張しちゃいますね~」  少し上ずったような籠った声で、右隣のオジサマが話しかけて来た。でっぷりとお腹の出たメタボ体型の方だった。 「ですよね。座席がドセンなんて、2016年の運、全て使ってしまった気が……」
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