コバト女学園

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 私の問いに一点の曇りのない清らかな瞳で、即答した。なんていい瞳をしているのだろう。 「私、オジサンの鳩愛に感動しました。これよかったら、どうぞ」  私は堪らず鞄の中からキュウリ(生)を取り出し、オジサマの手に握らせた。 「……これは、もしかしてお姉さん、萌伊(もい)ちゃん推しですか? 嬉しいな、実は私もなんです」  二人の間に言葉は要らなく、がっちりと握手を交わした所で、場内のBGMが止まり、フッと照明が落ちた。ライブが始まる前の緊張感が、会場中に張り詰める。ざわついていた観客の声がピタリと止み、皆の視線がステージに注がれる。  キーン コーン カーン コーン  始業開始のチャイムが鳴り響くと、ワッと歓声が上がった。皆一斉に立ち上がり、固唾を飲んでステージを見守る。本日のステージは奥に向かって階段になっていて、階段の中程に扉があった。きっとあの扉からメンバーが登場してくるのだと期待を膨らます。今日のセトリ(セットリスト)は何だろう? 萌伊ちゃん、今日はどんな髪型かな? ツインテールだったらどうしよう。見た瞬間に萌死にしてしまう。鼓動が速くなって来た。
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