44人が本棚に入れています
本棚に追加
私の問いに一点の曇りのない清らかな瞳で、即答した。なんていい瞳をしているのだろう。
「私、オジサンの鳩愛に感動しました。これよかったら、どうぞ」
私は堪らず鞄の中からキュウリ(生)を取り出し、オジサマの手に握らせた。
「……これは、もしかしてお姉さん、萌伊(もい)ちゃん推しですか? 嬉しいな、実は私もなんです」
二人の間に言葉は要らなく、がっちりと握手を交わした所で、場内のBGMが止まり、フッと照明が落ちた。ライブが始まる前の緊張感が、会場中に張り詰める。ざわついていた観客の声がピタリと止み、皆の視線がステージに注がれる。
キーン コーン カーン コーン
始業開始のチャイムが鳴り響くと、ワッと歓声が上がった。皆一斉に立ち上がり、固唾を飲んでステージを見守る。本日のステージは奥に向かって階段になっていて、階段の中程に扉があった。きっとあの扉からメンバーが登場してくるのだと期待を膨らます。今日のセトリ(セットリスト)は何だろう? 萌伊ちゃん、今日はどんな髪型かな? ツインテールだったらどうしよう。見た瞬間に萌死にしてしまう。鼓動が速くなって来た。
最初のコメントを投稿しよう!