イケメンじゃないの?

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「え? ……天使なの?」  さっきからDVDで連呼されるワードが気に掛かってはいたが、目の前にいる男が天使だと自ら名乗ったことに驚いた。天使と聞いて、その姿を想像すると、くりくりした巻き毛の、ほっぺたの血色がいい、背中に羽根の生えている全裸の子供が浮かぶ。成人にしたとしても金髪で、青い瞳で陶器のような白い肌をした絵になる様な、美しい人を想像する。目の前にいる男はお世辞にも美しいと呼べる人種ではない。  顔がでかくて、全体的な体のバランスも悪いし、顔を見合わせていると自然と笑いが込み上げてきそうなファニーフェイスだ。 「天使って、もっとイケメンじゃないの?」 「これ以上の美がどこにあるというのだ?」  自称天使は右手を頬に添えて、真顔で答えた。ブサイクな上に、ナルシスト。これは相当、面倒臭い奴と見た。 「信じられないのであれば、俺が天使である証拠を見せよう」  天使は立ち上がり、Tシャツを脱ぎ捨て、両足を肩幅に開くと、両手を握りしめ、んんんと唸りながら、力み出した。その体勢が、犬がウンコをしようと踏ん張っている姿に重なり、まさか変なもの出で来ないよねと不安になる。
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