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そんなことした? と記憶を辿る。確か、彼が何かわけのわからない言葉を話した時に、「もう一度言って」と人差し指を立てたかもしれない。
「間違ってる。『了解』を意味するポーズは親指だから。人差し指じゃないから。あんたの勘違いだから。つうか、その問い掛け絶対、日本語じゃなかったでしょ? 天使語とか解らない言葉使ったのなら、それ確信犯でしょ? 天の使いって名乗っているくせに詐欺だっ!」
「え? そうなの?」と天使は首を傾げながら親指を立てるポーズをする。契約に関する質問は、「記憶にございません」と不祥事を隠す政治家のような言い訳を返す。
「暮らしをサポートって、勝手に上がり込んでくつろいでいる様子を見ると、ここに居座るつもり?」
「居座るとは失礼な。DVDで見ただろう。パートナー契約を結んだ以上、義務になるのだ」
「契約結んだって、騙したんじゃない! 最悪。何かイライラする顔してるし!」
もう我慢の限界だ。警察に来て貰おう。どう考えたって私に負はない。あの怪しいDVDも恐喝の証拠として提出しよう。携帯電話を掴んだ所で、「……ササイモイ」と男はぼそりと呟いた。
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