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思わずぴくりと耳が反応する。
「ニコは笹井萌伊とか言う、アイドルが好きなんだろう?」
何で萌伊ちゃんの名前を……もしかしてコイツ、隣の部屋にも入った? 寝室を兼ねた和室は、壁中にポスターが貼ってあり、棚には数々のコバト女学園グッズが並ぶオタク部屋と化していた。
以前、友達のまあこちゃんに部屋を見られて、「怖い」「ロリコン」と一蹴されて傷ついてから、自分だけのヒミツの部屋にしようと誓った。見られた恥ずかしさに顔が熱くなる。
「もう、無理。ありえないこんなの。これ以上、私のプライベート部分に土足でずかずか入って来ないで。今すぐ出てって!」
「何をそんなに怒っているのだ?」と不思議そうな顔で、男は訊ねる。この微妙にずれた感じが余計に、私を苛立たせる。あぁと頭を抱えた所で、「笹井萌伊になりたいのだろう?」と続けて訊いてきた。
「だからさっきから、何言ってんの?」
苛立った口調で訊き返すと、男は真面目な顔をして、「笹井萌伊になれるぞ」と断言した。
「お仕事完了時のパートナーへのご褒美だ。ニコを憧れのアイドル・笹井萌伊にしてやろう」
「何を冗談……」
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