44人が本棚に入れています
本棚に追加
「冗談ではない」と男はすぐに否定した。
彼は、勝手に引っ張り出して履いている私の高校時代のジャージの尻ポケットから、ドロップの缶を取り出した。
「『変身アメ』という。これは簡易版で、効果は10分程だ」
缶の中から真珠くらいの粒を一つ取り出し、口の中に放り込む。虹色の光を纏った不思議な色のキャンディだった。
「頭の中でこの人になりたいと念ずれば、そのように姿形、声も変わるのだ」
そう説明している間に男の声は、低い男性の声から、高くてかわいいらしい女の子の声に変化した。
「嘘、やだっ!」
両手を口に当てて、息を飲んだ。目の前にたはずブサメンが、史上最強にかわいい萌伊ちゃんに変わっていた。しかも私の好きな髪型のツインテール。確かに先週NHKホールで見た萌伊ちゃんが、目の前にいた。
思わずそのぷっくりとしたほっぺを突いてみた。マシュマロみたいにプ二プ二していた。萌伊ちゃんのほっぺってこんなに気持ちいいんだね。元はブサメンと解っていても、「萌伊ちゃんのほっぺ触っちゃった」という感動が押し寄せる。
最初のコメントを投稿しよう!