ブサイク天使と同棲始めました

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 見た目は家電量販店で売っているような品である。 「天使の世界もハイテクなのね」  天使の住む雲の上は楽園のようなイメージがあった。バロック調の建物と、動物や食物と共存する楽園。いつでも春のような麗らかな天候で、どこにいてもハープの演奏が聞こえてきそうな平和な世界。 「まぁ、地球にいる時ぐらいしか使わんが、時代と共に変化しているのは確かだ」  天使は画面を覗き込みながら、しかめっ面でタブレットを操作する。 「おぉ、あった」と頷いて、タブレットをテーブルの上に置いた。「見てくれ」と言われて画面を覗きこむ。画面にはお爺さんが写っていた。  つるりと禿げあがったスキンヘッドに、目が覆われる程の長い眉毛、鼻から下の顔の半分程が、真っ白なヒゲで覆われている。写真は上半身を写したものだったが、ヒゲは胸の辺りを通り越す程長かった。きっとラプンツェルのようなヒゲに違いない。倫理の教科書で見たような、貫禄のある風貌だ。 「この方は、天使の最高位に属する方で、通称『ファーザー』という。1か月前から天界を抜け出し、行方不明になっているのだ」  天使は説明を添えた。
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