第13章 熱風

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身支度を整えて、向かった先は 双葉亭。 陽はまだ明るい午後の時間、店内は空いていた。 半次郎は休憩中だろうか、カウンターにはオーナーの善治郎が 立っていた。 「いらっしゃい。」 「こんにちは、お久しぶりです。」 二人、窓際のテーブルに向かい合って腰を下ろした。 少し早いが、本日のディナーを頼んだ。 運ばれてきた料理を、言葉少なに黙々と平らげた。 空になった皿を前に、満腹になったところで、 葉月と目があって、笑顔がこぼれる。 「・・・なに?あれ。」 カウンターに戻ってきた半次郎がオーナーに尋ねる。 「さっきから、全然、喋ってないぜ。 あいつら、ケンカでもしたの?」 「あれが、ケンカしてるように見えるか?ボケナス。」 善治郎がグラスを拭きながら答える。 「ありがとう。」 コーヒーを運んできた半次郎に、葉月は視線をあわせずお礼を言う。 「サンキュ」 と言う颯をチラッと見ても、顔は窓の外をむいている。 あぁ・・・そうゆうこと・・・ 半次郎はカウンターに戻ると黙ってオーナーを手伝い始める。 「ごちそうさまでした。」 「ごちそうさん。」 会計を済ませ、店を出る二人の後ろ姿を見送った。 なんだか、あてられっぱなしだな。 ま、俺は葉月さんが幸せなら、それでいいんだけどな。 半次郎は、もう一服しに、裏口に向かった。 fin.
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