第14章 濡風

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ガチャ。 アパートのドアを開けて中に入ると、自然と大きなタメ息が出た。 「はぁ・・・凄かったね。」 「あぁ、ひでぇ天気だ。」 「タオル持ってくる。」 葉月は、ビチャビチャに濡れた靴下を脱ぐと、 洗面台からタオルを持ってきた。 颯は葉月バッグを取り出して、廊下に置いた。 頭からは、雨の雫がポタポタと滴り落ちている。 「ごめんね、こんなに濡れちゃって・・・」 屈んだ颯の頭に、タオルをかぶせる。 ゴシゴシと髪の毛を拭く葉月の手首を、颯の指先が、ゆっくりと遮るようにつかんだ。 何も言わずに、ギュッと葉月を抱き寄せる。 雨で濡れた身体は、冷えきっている筈なのに、 葉月の身体は、急に熱を帯びる。 「・・・このまま、帰ったら、風邪ひいちゃう・・・  今日は、泊まってって・・・」 とぎれとぎれに、颯の腕の中で、伝えた。 何も答えない颯の腕に、力が入った。 「あの、お風呂、お湯入れてくるね。」 そっと、身体を離すと浴室に向かった。 タオルをかぶった颯の顔は、よく見えなかった。 「オレは、ウィンブレの下、そんな濡れてないから、先に入れ。」 タオルをかぶったままの颯が、玄関に佇んだまま静かに言う。 「・・・うん、急いで入っちゃうね。」 「ばか、ゆっくりあったまんねぇと風邪ひくぞ。」 葉月が浴室に消えると、颯は濡れたジャケットをゆっくりと脱いだ。
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