834人が本棚に入れています
本棚に追加
「あれから鞄に入れて持ち歩いて、時々見てはいるんだけど未だにわからなくて…」
「ふーん、そうなんだ。まあ、答えは教えてあげないけどね。」
悠の言葉の最後が少し途切れた気がした。
唇が重なって暖かくて柔らかい感触に包まれる。離れた瞬間、唇は冷気を感じ、除く全身は熱を持った。
「ず、ずるい!」
今の感情をどう表現していいかがわからなくて、再び悠の胸元に顔を埋める。けれど、悠の背中を引き寄せている腕がもう緊張はしていなかった。
「機嫌直った?」
「…直らない。」
「そっか…じゃあ、俺は留学やめよっか。」
「…それはダメ。」
再び、コツリとつけられたおでこ。そこから溶け合う様に温もりが調和して、悠と1つになった気がする。
「悠…」
「んー?」
「好き…」
「……。」
「……です。」
クッと、こみ上げる笑いを抑える様に悠が笑い私がムッと口を尖らせた。
「…二度と言わない。」
「それはダメ。」
思えば、ずっとこんな風に一緒に居たんだよね、気持ちが通じ合う前から。
たくさん、辛い思いもしたけれど、大事な事はずっと変わらない。
互いを想い、大切でいる事。
この先もずっと、そうでありたいな…悠の隣で。
そんな願いを込めながら、もう一度したキスは、甘くて優しくて、少しだけ胸を締め付けた。
~『128√e980』fin.~
Thank you for reading...
最初のコメントを投稿しよう!