柔らかな君・上

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元々、同性愛にも性転換にも大した偏見はないけど。 抱き合う私たちはお互いストレート。 別に、これに大した意味はないのだ。 「おいそこ。レズってんじゃねえ」 …目の前の男を除いて。 「妬くな妬くな」 笑いながら言うと、不機嫌に輪をかけてしまったらしい。 「お前、分かって言ってんだろうな?」 「何が?」 「どっちに妬いてんのか」 うわーお。 「えーっと……どっち?」 試しに小首を傾げて問うてみたら、抱き締めていた体が、スルリとなくなった。 あ、逃げんなコンチクショウ。 「……ごゆっくり」 まほは、苦笑いをしながら部屋の扉を閉めた。 そんな、殺生な! パタンと、無情な音を立てて閉められた扉。 直後にカチャンという小さな音。 ………あの子、ご丁寧に内鍵までわざわざ締めて行きやがった。 .
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