柔らかな君・上

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扉を恨めしく見つめる私に、 「お前、知ってっか?」 と問う男。 「んー?」 「お前ん所の親御さん、お前のこと『めぐ男』って呼んでんぞ」 「へー。さもありなん」 「…良いのかよ」 散々言われてるしなあ。 男のようだと。 でも、思うのだけど。そういうふうに育てたの、あの人たちだと思うんだけどなあ。 「一人っ子だから、娘も息子も兼ねてるって思えば、二倍お得なんじゃない?」 「お前なあ…可愛げって言葉、知ってっか?」 「知ってる。女としての可愛げは無いかもしれないけど、人としての可愛げは、あると思うの」 天秤にかけたら、断然、人として…って方が大事だよね? っていうか、人としての可愛げがない人って、もう、終わってるよねー。 関わり合いになりたくない。 向かいの男はため息を付いた。 「…で?今度は何の嫌なことがあったんだ?」 .
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