柔らかな君・上

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嫌なことなんて、日常生活に溢れている。 でも、愚痴を簡単に零してしまうには、些か私のプライドは高くて 困る。 「…………」 「恵美?」 ダンマリを続けていると、肩に手が伸びてきて。 トン と押されて、身体が後ろへ傾いた。 ソファーのクッションに背中が付いた所で、影も一緒に折り重なるように降りてきた。 そのまま唇に触れる、暖かなもの。 優しく触れて、啄ばんでいく。 ああ、と。 開けない口の代わりに、内心で溜息をついた。 ――ああ、嫌だ。 こうやって、全部飲み込まれてしまうのは。 不安も不満も、言えない言葉も。 .
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