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間近にある胸ぐらと肩を掴んで、グイと横に引っ張った。自分の上にあった圧迫感が消える。
簡単に傾いだ体の上に乗り上げ、今度は私が馬乗りだ。
態勢を変えた拍子に、合わさっていた唇が離れた。
「言えよ」
「…………」
「何か嫌なこと、あったんだろ?」
ものも言わずに見下ろしていると、男は首を伸ばして、ペロリと私の唇を舐めた。
下から見上げる瞳は、こんな時だけ無駄に甘い。
私の尻の下。座布団変わりになっている腹は、固く引き締まっていて、そんで、暖かだった。
「……馬鹿な男に腹がたつ」
小さな声なのに、下敷きにしている男は聞き漏らさずに、呟くような言葉を拾って行く。
「職場のやつか?」
コクリと頷いた。
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