第1章

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 翌日は朝の10時に学校の裏門に集合となっていた。裏門とは北館に近いほうの門であり、別に学校の本当の裏にはない。そこに作ったら森を抜けることになって誰も使わないからだ。  桜太は通学鞄を化学教室に置かずに裏門に向かった。ひょっとしたら外でご飯を食べられるかと遠足気分なのだ。だから弁当もちゃんと外で食べると菜々絵に宣言しておいた。これで今日は揚げ物も入っていないだろうと考えてにんまりとなってしまう。 「あっ、部長が遅いぞ」  桜太を見つけて楓翔がそんなことを言う。いつもは優我がどれだけ遅刻しても文句を言わないのに、どうして自分にだけと思ってしまった。 「遅くないし。って、大倉先輩」  楓翔の文句よりも桜太は視界に入った亜塔の格好に脱力した。亜塔は今日もヘルメットを着用している。またしても探検気分を醸し出していた。 「やはり地質調査といえばこれだ。あの方もどこかに入る時には着用しているわけだし」  亜塔は完全にサングラスを掛けたあの某番組の人しか意識していない。そんなにも毎週欠かさずに見ているのだろうか。亜塔の興味が謎である。  裏門にはすでに科学部のメンバーがほぼ揃っていた。集合20分前だというのに優秀である。ほぼというのは遅刻常習犯の優我がいつもどおりまだ現れていないのだ。それに松崎と林田という新旧顧問コンビも現れていない。 「先輩。その水槽に大量のカエルを入れる気ですか?」  迅が芳樹の首から大きな水槽がぶら下がっているのに気づいて訊く。 「まさか。いつもより多く見つかると思ってこのサイズだよ。こんなところにぎゅうぎゅうに入れるなんて可哀相なことはしないさ」  芳樹の答えは井戸への興味が消えているメンバーがいることを示唆していた。そもそもこのメンバーが揃って出かけたことなどない。何だか不安である。
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