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「おっ、シューゲルトアオガエル」
芳樹は早速カエルを捕まえ始めていた。こちらも井戸問題は放置である。しかもカエルの名前を叫ばれても誰も解らない。緑色の小さなカエルである。
「この水の流れを辿るしかないわね」
そんな勝手な面々を無視して松崎が検証を始めた。桜太はさぼるわけにもいかず、松崎たちの推理を拝聴することにした。莉音や優我もそれに加わる。
「そうですね。怪しいのはこの用水路です」
林田ももさもさ天然パーマを揺らして同意した。しかも松崎に少しずつ近づいている。恋に落ちたのは間違いないらしい。
「あっ、ここに不自然な流れがありますよ」
地面にへばりつくように用水路を観察していた楓翔が大声を上げた。指差す先に何かあるらしいが、近づかないと解らないものだ。
「おっ」
近づいた桜太は不自然さが解った。指差す部分に渦が出来ている。一直線に流れている用水路では妙な話だ。ここに違う流れが生まれている証拠である。
「何だ?吸い込まれているみたいだな」
楓翔の背中に乗っかって亜塔は用水路に指を入れていた。何だか仲がいい二人である。楓翔も亜塔を背中に載せたまま同じように指を用水路に入れていた。
「横穴は小さそうです」
楓翔が松崎に報告する。
「そうね。地盤沈下の規模からしても大きくないものが正解よね」
松崎もこの横穴を検証すべきとの方針を取った。
「でも、これってどうやって学校に流れ着いているか検証するんですか?」
門外漢の桜太は質問する。穴を辿って学校に戻ることは不可能だ。
「ふふん。こういうこともあろうかと」
背中に乗った亜塔を振り落とし、楓翔がズボンのポケットからピンポン玉のようなものを取り出した。しかしピンポン玉と違ってカラフルな蛍光色で塗られている。
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