-1- 可愛い僕の天使

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僕は天使とつきあっている。 天使のように美しいとか、優しいとかいう意味ではなくて、本物の天使だ。 普段は翼を仕舞っているけれど、僕の膝の上で眠るとき無防備に背に垂れたそれを撫でてやるとうっとりとした顔をする。くふんと甘い息を吐きだす唇は濡れたような薔薇色で、茶色いくせっ毛の間に覗くまつげはびっくりするほど長い。日焼けなんて無縁の透き通るほど白い肌は、少年のように滑らかで無垢なのに、どういう訳か色めいて僕を誘う。 ふわふわとした羽は絵本に出てくるそれと同じ純白で、外をうろうろしていてよく汚れないものだなと感心する。はじめの頃はおそるおそる触れていたけれど、今となっては眠っている猫を撫でるような気安さと愛しさで、ゆっくりと手を滑らせる。 この天使はどうも身づくろいに無頓着なようで、ところどころぼわっと乱れたりしているから、そういうところは羽の流れを整えるように丁寧に撫でつけてあげる。 何度も触れていると羽は艶を増す。天使は気持ちいいのか、とろりと体をすり寄せてきて、その重さに体勢を保っているのが辛くなってくる。それでも目を覚ませば気まぐれに出て行ってしまうかもしれないから、体を動かすことができない。 可愛い寝顔を見ながら、くたりとくつろいだ柔らかい羽を撫でていると優しい気持ちになれる。 あんまり可愛いから誰にも見せないように、どこかに隠しておきたくなる。僕と一緒にいてくれたら、とびきり優しくして、甘いお菓子をあげて、毎日撫でてあげるのに。お菓子に眠り薬を仕込んで君を閉じ込めたら、君は怒るかな。 起こさないよう気をつけて、羽に顔をうずめた。日向に香る花のような匂いをすんと吸い込む。
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