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第3章 初恋
学校から少し離れた公園で止まった。
椿姫が言う。
「なんであんな事をしたの!」
確かにそうだ。なぜなんだろうか。
「もう嫌だよぉ」
壊してしまった。くそっ。
これだから自分の手は嫌いだ。なんでも壊してしまう。
「ごめん・・。」
と呟く。そんなんじゃ済まされない事だというのは分かっている。
でも・・。
「わからない。」
なんで助けようとしたのかも、どんな事を言えばいいかも、何もかも分からない。
この世界は分からない事だらけだ。
「あなたまで巻き込まれたらどうするの・・・。関係ないのに。」
と涙を堪えながら椿姫が言う。
関係ないか・・・。
「答えてよ!」
椿姫が叫ぶ。
一つ理由はある。だがあまりにも馬鹿々々しすぎる。それは・・・。
「・・き・・。」
「何?」
「お前が好きだから。」
この感情が理由になるのかは、分からないが、それでも俺は椿姫が好きなんだと思う。
椿姫の瞳から涙がこぼれる。
「なんで私なんかを・・・。誰にも愛されたことなんてなかったのに。」
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「なんで鱗があるの?」
「忌子だ!」
「くるな!。」
「化け物だ。」
いつ言われたのか忘れた言葉。思い出す限り暴言ばっかり。
私が生まれた直後、母親は自害し、お金のために私を引き取った義理の母には、首輪を付けられ地下牢獄に閉じ込められ、沢山の人間に気味悪がられ、恐れられ、差別され、いじめられ、なのに、この少年だけは、愛してくれ、好きと言ってくれた。結果がどうであろうと、私のために怒ってくれて、辛さを一緒に背負ってくれると言ってくれた。こんなに優しい少年に出会えるなんて・・・。神様は、優しく、残酷で・・・。このまま2人でずっと逃げれたら良いのに。今私が言える言葉、言いたい言葉は、
「ありがとう。綺羅。」
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俺はその笑顔を忘れない・・・。
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