ギャンブラー綺譚

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僕の名前は掛山、まあまあ名の知られている会社に就職できて五年になる、事業推進部第三営業課主任のポジションに就いている。 社内の評価も勤勉で営業成績も良く、上司からの信頼もあり、部下からも頼られる存在とあったが、一方、同僚や特に同じ部署のOLに嫌がられている一面も持っていた。 僕は、自分で言うのもなんだが、愛想も良いし、気も利く、ルックスだって中より上は確実だし、服装だって突拍子も無い物は身に付けたりしない、それでも、近くに来ないで欲しい、喋りたく無い、むしろ出勤しないでくれ、などと扱き下ろされるのにはちょっとした訳があった。 それは僕の趣味に関する事に関係があったのだが。 「おはようございます」 いつもと変わらぬ出勤のつもりだったが、オフィスに入ると同僚の僕を見る好奇の眼差しと、ひそひそ話がイヤな予感を増してゆく。 もしかして、臭うかな、、、。 クンクン シャツと下着は消臭剤で誤魔化しているのだが、四日目ともなるとこの時期。 ヤバいか。 給湯室にお茶を汲みに行くと、部下である女子社員の話し声、不意に聞こえた僕の噂話、仕事では和気あいあいと接して雰囲気も良好だと思っていたのだが、陰口か、自分のせいだからしょうがないと言えばそれまでだが、やっぱりキツイな。 「掛山さん、今日も同じシャツ着ていたでしょ、臭いわよね」 「うん、消臭剤と混じって酷い匂い、気持ち悪くなりそう」 うう 「もう3日も同じよ、家に帰って無いんじゃないかな、頭見た?凄いフケ」 うぐぐ 「きゃー!お風呂も入って無いって事、げ、幻滅~」 僕はこっそりその場を離れた、逃げたのだ。 そう、僕の嫌われている理由、それは臭いだったのだ。
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