ギャンブラー綺譚

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すれ違う人が、必ず顔を歪める。 それでも昼になれば腹が減る。 ちょっと早めの昼食を取ることにした。 お蕎麦屋に入りたかったが、コンビニにした、カツ丼弁当とペットのお茶を買って、いそいそと店を出た。 場所柄か、昼前の公園に人気は無く、片隅の花壇の縁で一人ランチとした。 昼休みが過ぎても僕はまだ公園にいた。 あんな騒ぎになってしまったら、おいそれと戻る気にはなれなかった。 何も考えないまま一時間も過ぎたと思う、ふと僕以外に誰も居ないこの公園の隣に、神社を見つけた。 こんなの最初からあったっけ、いやあったのだろう。 都心のど真ん中には珍しく大きな木が立ち並ぶ、その大木が壁のように神社の敷地を取り囲み、あたかも古代の森をそのまま切り取ったかのような、緑豊かな空間があった。 そう言えば、この辺に勝負事に御利益がある、神社がひっそりとあるとか、無いとか昔、先輩に聞いた事を思い出した。 勝負事の神社ならば今の僕にはぴったりだ、これもご縁って事で、その木々の間に足を入れた。 流石に狭い敷地だ、正面に小さな社が祀ってあるのがすぐ見てとれる、しかし、外から見た大木もさることながら、所狭しと生き生きとした草花が生い茂って、一歩中に入れば、隣の建物や公園はまるで見えない、まさに杜の中と言える、僕は何か不思議な気持ち、力を感じた。
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