ギャンブラー綺譚

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二礼二拍手一礼 頭の中でイメージして、丁寧に模倣した。 お願いします、ギャンブル神社の神様、どうか明日の京都競馬場第12レース、彼女に勝利を下さい、ナツキララを勝たせてやって下さいませ、なにとぞよろしくお願い致します~。 と、その時だ。 「うおっほん」 突然後ろでされた意思表示に、反射的に振り向くと、そこには老人の男性が立っていた。 こ、これはまさか。 150cm無いくらいの小柄な背丈に、耳を隠す長めの白髪、顔中のシミと皺の真ん中にできものだらけの赤い鼻、そして服装も白い作務衣ときたから、僕は本気で、古墳時代の神様かと思ってびっくりした。 でも、そんな訳ないと瞬時に我に返り、祠の前を譲るのであった。 「あ、すいません、どうぞ」 参拝客と言うよりは、もしかして宮司さん、なのだろうか、そのおじいちゃんの横を通って神社を後にしようとした時だ。 「あいや待たれい」 いざ呼び止めてられると、少し警戒心を感じた。 「おぬし、なかなか良い匂いをしているな」 えっ、遠回しに苦情だろうか。 「いや、大した、ギャンブラー臭じゃと思うてな」 「ギャンブラー嗅、、、良く分かりましたね」 確かに、こんな不潔で臭くなったのは、全て彼女の為、勝利の為のゲン担ぎなのだから。 「フォッフォッフォッ、真のギャンブラーは皆そんな匂いをしているわい」 うっ、そうなんだ、恐るべきはギャンブル狂者。 「あのう、おじいさんはこの神社の関係者の方ですか」 僕は、素っ気なくするのも、なんだか悪い気がして、社交辞令的な質問をしてみた。 「うむ、如何にも、この中央区猿彦神社の鎮守神、サルヒコじゃ」 鎮守神ってなんだ?まぁなにしろやっぱり関係者だったようで、僕は続けた。 「この神社って、ギャンブルに御利益があるって聞きましたが、本当ですか」
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