ギャンブラー綺譚

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「僕は社会人になってから、先輩に連れられて競馬を覚えました、いやいや、ほんの嗜む程度です、週末に開催していれは競馬場に足を運ぶようになりましたが、もしかすると馬が見たかっただけなのかもしれませんね、最早ナツミの事はすっかり忘れていたのですけど、やはり馬が好きだったから。 でも、思い出したと言うか、すぐ分かりましたよ、その競走馬を見た時、ナツミだって、彼女も僕を覚えていたようで、嬉しいのか何度も嘶いていました。 ナツミは名前を変えて、ナツキララになっていました、僕はナツキララの事を調べました、すると彼女は未だ未勝利で、事あることか引退が決まっていたのです。 しかし競走馬の引退後は、牝馬は繁殖の仕事があるらしいのですが、それも成績が悪いと屠殺処分になるらしいのです、、、彼女の引退レースは明日なのです。 ぼ、僕は彼女を助けたいのです、彼女の勝利の為に、僕はゲンを担ぎましたよ、同僚に嫌われても、OL達に気持ち悪がられても、髪も洗わなきゃ、風呂にも入らず、ほら、お相撲さんもゲン担ぎに髪も顔も体も洗わず勝負に挑むってあるでしょ、あと毎日毎食カツ丼を食べました」 「ちょっと違う気がするが、見上げた根性じゃ」 「、、、なにしろ、皆にどんなに嫌われてもいい、どうか彼女、ナツミに一勝を与えてあげて下さい」 なぜか、でも自然に、僕はその神社関係者のおじいさんに深々と頭を下げた、おじいさんはくるりと後ろを向いたまま、応えた。 「良かろう、このサルヒコ、おぬしに力を貸そう」 「ありがとうございます!」 条件反射で愛想良くお礼申し上げるのは、営業マンの性だろうか。 「うむ、ではワシの力で明日1日、おぬしのギャンブル運をMAXまで高めてやろう」 え、どう言う事? 「これで賭事、博打、事あるギャンブルは百戦常勝、おぬしの願いを叶えるがいいさ」 おじいさんの言っている意味が分からなかったが、ただならぬ迫力に、精一杯の問を投げかけた。 「え、え、あ、貴方はいったい何者ですか」 おじいさんを中心にこの杜全部を包む異様な雰囲気に僕は飲み込まれ、次の瞬間意識が遠のいた。 「ワシは、袁彦、賭博の神じゃよ」
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