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珍しく
アグリは火車と共に表通りを歩いた
先刻の件も在る為、成る可く彼女を一人きりにしたく無い彼にとっても都合が良い
けれど
稀ビトで在る火車はやはり表では目立つ存在
癖のある黒髪に褐色の肌
おまけに黄金色の瞳と来た
誰の目も引くその容姿と、その隣を歩く警邏少女
「なんだ、捕物でも在ったか?」
先程の爆音を聞いた所為か
人々は火車を好奇な目で見た
「…気にするな」
隣でアグリが呟く
「今は特に気が立っているから余計に警戒しているだけだ」
「ぼく、きにならないです」
「…なら良い」
事実、火車は周囲の視線にそれ程気を留めてはいなかった
それよりも問題なのが
「…ふぅん」
「…如何した」
火車が目を細める
何かを探る様に視線を巡らせ、鼻をくんくんと動かしていた
「…かやくのにおい」
「火薬?」
「…このまえから、ずっとするです」
そう言って眉を寄せた火車
「さいきん、よくするです。いろんなところから」
「…場所は特定出来るか」
聞くと、火車が目を瞬かせて頷いた
「もちろんです、ご主人」
「なら、場所を見つけ次第報せろ。呉々も余計な事はするなよ」
彼女の言葉に火車は再度頷いた
そしてアグリが所へ着くのと同時に傍を離れる
彼女の飼い猫は言い付け通り、火薬の香る場所を探しに夜の町へと消えて行った
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